父のコテージ
神奈川県伊勢原市

私の父、中村正直は亡くなる2年前から伊勢原市大山の麓に小さなコテージを借りその家を自由自在に改装しておりました。
モノ作りの大好きな父にとってそこは格好の遊び場でもありました。
最初は仕事の合間に訪ねては少しずつ壁を塗ったり建具を作ったりしてましたが後半の半年は毎日鎌倉山から通って作りこんでいました。

父に初めて家を見に連れて行かれたとき周りの景観とシンプルな家の形にすっかり魅了され即日契約をしました。
鎌倉から車で1時間ほどの距離なのに別世界のような雰囲気です。私たち家族には田舎がないので田舎が出来たような気分でした。。

父が亡くなり1年が過ぎようやく写真を整理し皆様へお見せする気持ちになりました。

家はほぼ完成しましたが父の得意分野のお庭は未完成のままです。時折訪ねては草むしりなどしてますがそれもまた野趣のある庭ということで父に許してもらいましょう。

ではどうぞご笑覧くださいませ。

2014年10月23日 荻野洋子





Before

       
 伊勢原市は丹沢山脈への入り口でもあります。
山が好きだった父には丹沢は庭でもありました。
 初めて訪ねた日、
玄関の前の紅葉は色づき始めていました。
 築60年の古家。直しがいがありますね!
このお庭の中には湧水が流れております。父は最初にお庭の各所に湧水を引き将来の庭造りの準備をしていました。
 家の中は長く放置されていたのでずいぶん暗い雰囲気でした。
       
 家の中で一番気に入った外廊下。
無垢の床が経年した趣をだしていました。
 昔の家には必ず玄関にお客様を迎えるときの小さなスペースがありました。こんなに小さな家なので格子戸をあけると3畳ほどの
ラウンジがあります。
 この家の好きなところのひとつ。田の字づくりの部屋の配置です。襖を取り払うと広いスペースが現れました。
父は全室フローリングにするため畳を撤去しました。
 お庭から家を眺めてはプランを立てていました。
       
 玄関の扉をあけると奥まですべて見えます。
シンプルでミニマムな形ですね。
 鎌倉山から椅子やテーブルを運び季節の良いときは外で仕事をしたり食事をしたり、ピクニックのようでした。  だいぶ家が出来上がってきました。昔の家なので基礎も簡単。
でも地震にも台風にも倒れません。
屋根が軽いせいですね。
 このコンサーバトリーもどきのスペースは将来バスルームになる予定でした。南側に向かってきれいな山が見えるので山を見ながらお風呂に入ると申してました。



After

父はリフォームを始めてからこの家のイメージに合いそうな照明器具、建具、窓などをこつこつ集めていました。とても上手に使っているのでご覧くださいませ。
       
 家の正面玄関もシックに塗装が施されたおかげで見違えました。
この墨黒は父が好んで使った色です。
 玄関前のラウンジはこの家の顔です。中央に飾られた般若のお面は私達の友人、三田村さんのおじ様の作品です。  ラウンジから奥へ。 ラウンジ以外の床はすべて無垢松材を敷き詰めました。灯りの採り方や色使いのうまさに感心しました。  この廊下はもとはありませんでした。居室からキッチンが丸見えなのでキッチンと居室の間に作られました。
       
 父が休むはずだったベッドルーム。ベッドもお手製です。この窓の外に湧水を引きこみ寝ながら水の音を聞くのだと私に話していました。  廊下も居室もきれいになって見違えました。  父の作ったキッチン。シンクは私といっしょにイケアに行って購入したもの。この家にはちゃんとしたキッチンがなかったのでキッチン作りも
ずいぶん楽しんだようです。
キッチンから庭への出入り口につけられたドア。写真ではよくわかりませんが扉は少し斜に付いています。
出入り口が狭いので考慮したのだと思います。
       
 昔の家は良い材料を使って作られていたのですね。
はじめのボロボロの外観からは想像できなかった
立派な梁が現れました。
 このコーナーは父の小さな書斎となっています。
山を見ながら本を読み勉強していました。
 夏は窓を開け放しておくと涼しい風が
家中を通りエアコンなど不要です。
時折訪ねては父と同じように山を見ながらくつろいでいます。



父が私に残してくれたものは数え切れない程ありますがこのコテージは父からの最後の贈り物となりました。ここは今では家族の憩いの家になりました。
忙しい仕事の合間に訪ねては本を読んだり山を歩いたりしています。
ミニマムで豊かな暮らしの練習をしようと思っています。